1. はじめに

人生100年時代を迎えようとするなかで、脳の健康増進は身体の健康にために不可欠であります。脳は身体の司令塔的な役割を持つと一般に認識されています。

脳はエネルギーを最も必要とする組織であり、頭蓋骨で保護されていることからも想像できように、デリケートであります。血液に吸収されたエネルギー物質であるグルコースや酸素は脳内の神経細胞やグリア細胞に供給されますが、それ以外の物質は毛細血管などで形成される脳のバリアーによりその供給は制限されます。その結果、脳内環境は厳密にコントロールされることになりますが、そのコントロールには肝臓、腎臓などの末梢臓器・組織との連携も極めて重要であり、脳と末梢とは両方向性のコミュニケーションにより成り立っています。

ここでは、脳の老化、ならびに物忘れの進行から始まる認知症、随意運動障害を特徴とするパーキンソン病などの進行性神経変性疾患予防発症遅延から健脳について、独自の亜鉛イオンZn2+)を基軸とした脳の機能解析、病態解析の視点から解説します。実験動物であるマウス、ラットを用いて明らかにしてきたエビデンスに基づいたものがたりです。

このものがたりは随時更新し、新しいトピックス(ものがたり)を加えていきます。