5. 記憶に必要な海馬とは?

海馬は解剖学的にタツノオトシゴに似ていることからその名前となりました。脳のなかで大脳皮質から海馬へグルタミン酸作動性神経を介して学習情報が伝達されます。嗅内皮質(野)から貫通線維を介して海馬の歯状回顆粒細胞、CA3錐体細胞、CA1錐体細胞に情報は伝達されます。貫通線維はZn2+を放出しないグルタミン酸作動性神経です。海馬内では、歯状回顆粒細胞から苔状線維を介してCA3錐体細胞に、CA3錐体細胞からシャーファー側枝を介してCA1錐体細胞に情報は伝達され、その情報は嗅内野に送られます。苔状線維とシャーファー側枝はZn2+を放出するグルタミン酸作動性神経です。

嗅内野―海馬神経回路は空間認識などの記憶を司り、神経終末からのZn2+放出の有無に関わらず、いずれのシナプスでもZn2+が必要です。下記のように、体験による記憶獲得・維持・想起に細胞外からZn2+供給が不可欠です。

ポイント 記憶には海馬神経細胞への亜鉛供給は不可欠である