15. アルツハイマー病は亜鉛毒性と関係する!

アミロイドβの凝集は重金属イオンにより促進されます。毒性の高いAβ1-42が細胞外液に分泌されると、Zn2+と結合しZn-Aβ1-42オリゴマーとなります。ラット脳内海馬にヒトAβ1-42を100~500 pM局所投与すると、Zn-Aβ1-42オリゴマーとなり速やかに海馬神経細胞に取り込まれます。この取り込みは神経活動には依存せ、一部は細胞膜と相互作用してAβ1-42はZn2+イオノフォアとして作用すると考えられます。ヒト脳細胞外液のAβ1-42レベルは<100 pMと推定されますが、何らかの原因でこのレベルが上昇すると細胞外Zn2+はAβ1-42とオリゴマーを形成します。また、アミロイド前駆体タンパク質から切断されるAβ1-40はZn2+との結合性が低いために脳細胞外液でZn-Aβ1-40オリゴマーを形成しません。Zn-Aβ1-42オリゴマーが形成されると、速やかに神経細胞に取り込まれる一方、神経細胞内では細胞外と比べてZn2+濃度が低いためにAβ1-42からZn2+が遊離して毒性を発揮します。老齢ラットでは脳細胞外Zn2+濃度が増加するために、ヒトAβ1-42の海馬神経細胞への取り込み、Aβ1-42による細胞内Zn2+レベルの増加は容易となります。つまり、加齢に伴いAβ1-42毒性は現れやすくなります。

1-42とともにZn2+キレーターをマウスやラットの脳内に投与すると、細胞外Zn2+キレーター(CaEDTA)は細胞外でZn-Aβ1-42オリゴマーの形成を阻害します。細胞内Zn2+キレーター(ZnAF-2DA)は細胞内でAβ1-42から遊離するZn2+を捕捉します。その結果、Aβ1-42毒性をマウス、ラットでブロックすることができます。しかし残念ながら、経口投与できるようなZn2+キレーターはありません。そこで、後述するように、細胞内Zn2+結合タンパク質であるメタロチオネインに注目しました。

ポイント アルツハイマー病の原因物質と考えられるアミロイドβ毒性はZn2+毒性に起因する。