10. うつと亜鉛のものがたり

ストレスが慢性化すると、グルココルチコイドはグルタミン酸興奮毒性(11を参照)を持続させ、海馬神経変性に関与します。慢性ストレスはうつ病の一因となります。すなわち、慢性ストレスにより海馬機能が障害されると、視床下部―下垂体―副腎皮質系を介したホルモン分泌が障害され、副腎皮質からのグルココルチコイド分泌制御が障害されます。

海馬はグルココルチコイド分泌の負のフィードバック機構の一端を担いますが、この機構が働かなくなります。うつ病患者の約半数でこのフィードバック機構が障害され、血中グルココルチコイドレベルにしばしば異常が観察されます。

グルココルチコイドはグルタミン酸作動性神経活動、そしてシナプスZn2+動態と密接に関係することからも、ストレスが原因となるうつ病に細胞内Zn2+恒常性の破綻が関与する場合があると考えられます。

ポイント うつ病に亜鉛が関与する