6. 記憶とは?

さまざまな環境を体験する認知活動により、また学習により記憶は形成され、維持され、そして想起されます。空間記憶は主に海馬を介して、恐怖などの情動は主に扁桃体を介して記憶は形成され、最終的には大脳皮質に貯蔵されます。記憶の細胞レベルでのメカニズムはシナプス可塑性と呼ばれ、これは神経細胞と神経細胞のコミュニケーションの場であるシナプスで観察され、認知活動に伴いシナプスはダイナミックに(秒レベルから)構造的・機能的に変化します。この可塑的変化が記憶の基盤です。

シナプス可塑性は興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸を放出するグルタミン酸作動性シナプスで研究が進んでいます。グルタミン酸神経終末では、グルタミン酸とともにZn2+が放出されることもあり、Zn2+を放出する神経はグルタミン酸作動性神経のサブタイプです。

動物実験では、このZn2+はグルタミン酸放出に対して抑制的に作用すると考えられます。Zn2+放出はシナプス可塑性に関与しますが、その生理的意義は未だに十分に明らかにされていません。シナプス伝達効率が増強される長期増強ではシナプス(主に後シナプス)が肥厚し、シナプス前ニューロンから放出されるグルタミン酸シグナルのシナプス後ニューロンへの伝達効率が増強されます。

ポイント シナプスの構造的・機能的な変化が記憶となる