4. 体験(認知活動)から学ぶ

私たちは日々の自分のおかれた環境のなかで認知活動を行っています。身の回りの周辺環境についてその状況と時間に伴う変化を認知(学習)しますが、興味、不安、恐怖などの感情を伴わない場合には、その環境や環境変化に繰り返し遭遇しないと体験した環境を忘れてしまいます。また、日常的な通学や通勤のルートも長い期間そのルートを利用しないと忘れてしまうこともあります。一方、学校などの教育施設では授業・講義で学問を学び、演習・実習では実技も習得します。学問や実技についての学習は、感情を伴わない場合が多いので繰り返しの学習が必要となります。

私たちは、あらゆる認知(学習)活動のなかで学習ならびに学習環境を通して視覚などの感覚情報を受け無意識に、また意識的に応答します。この応答には感覚神経―脳―自律神経、この神経系を介した視床下部―下垂体―副腎皮質系(HPA系)である内分泌系が関与します。つまり、感覚神経―脳―自律神経系が活性化(刺激)されると、脳のなかの脳幹にある青斑核ノルアドレナリン神経が活性化されます。

またこの活性化により視床下部―下垂体―副腎皮質系を介したホルモン分泌が刺激され、副腎皮質からグルココルチコイド(糖質コルチコイド)分泌が増加します。青斑核ノルアドレナリン神経は海馬、扁桃体など脳全体にその神経終末を送り、認知活動・脳活性化に関与し、シナプス可塑性の分子基盤である長期増強を促進させます。

ポイント 恐怖など情動を伴う体験は忘れない