3. 亜鉛の発見

亜鉛の発見は1746年とあります。鉛に似た性質もつ金属として日本人が亜鉛と命名しました。亜鉛は有害金属としてよく知られていた鉛に似た金属として日本では長い間注目されませんでした。そんななか、1869年、アプリコット、タマネギ、ピーナッツなどの特定の果物や野菜に「黒カビ」と呼ばれる病気を引き起こす真菌、Aspergillus nigerの成長に必要であることが発見されました。

その後、亜鉛は動植物中に一様に存在し、動物体内の組織・臓器で亜鉛濃度が異なることが明らかとなり、脳の亜鉛濃度も比較的高いことが明らかとなりました。脳内では空間記憶などを司る海馬、情動記憶を司る扁桃体で亜鉛は相対的に高濃度で存在します。

1934年にはラットを低亜鉛食で飼育し、発育、成長に亜鉛が重要な役割を担うことが証明されました。1939年には炭酸脱水酵素の構成成分であることが報告され、その後数百種類の亜鉛酵素の発見につながりました。1961年にはPrasadらによりイラン、エジプトなどでヒトでの成長遅延などを特徴とする亜鉛欠乏症が発見されました。

遺伝子の複製や発現に関与するタンパク質は亜鉛タンパク質であり、DNAやRNAに結合するタンパク質はzinc fingerという特有な構造をもつ亜鉛タンパク質です。精子形成、受精、味覚、免疫など多彩な亜鉛の生理作用が明らかにされてきました。

ポイント 亜鉛は脳をはじめ身体のなかでタンパク質と結合して機能する。亜鉛が不足すると成長が遅れる