17. パーキンソン病とは?

パーキンソン病では、身体動作の緩慢、手足の震えやこわばり、バランス能力の低下などの運動症状が観察されます。また、うつや不眠などの非運動症状(精神症状)もあり、何年もかけてゆっくりと進行します。 日本には60歳以上では100人あたり1人の患者さんがいますが、加齢に伴い罹患率が高くなるため、今後さらに患者数が増加すると予想されています。パーキンソン病は黒質にあるドパミン作動性神経細胞の選択的な脱落が発症の原因と考えられています。しかし、選択的な脱落がなぜ起こるかは明らかにされていません。ドパミン神経の脱落により線条体機能が障害され、全身の運動機能を調節する大脳皮質からの調節機能が低下して身体の動きに障害が現れます。運動症状は黒質ドパミン神経が50%以上脱落すると現れます。ドパミン神経の脱落は起きているが、運動症状が発現しない時期から非運動症状が観察されます。

黒質―線条体ドパミン作動性神経の特徴として、神経終末のある線条体に加えて黒質細胞体にもドパミントランスポーターが発現しています。すなわち、細胞体の樹状突起からもドパミンが放出されるためです。細胞体のドパミントランスポーターはドパミンを再取り込みします(順輸送)。また、視床下核や扁桃体からグルタミン酸作動性神経が黒質ドパミン神経に投射しており、ポストシナプス後ニューロンであるドパミン神経細胞膜に発現する代謝型グルタミン酸受容体シグナルを介して黒質ドパミントランスポーターはドパミンを放出します(逆輸送)。黒質ドパミントランスポーター活動を介した黒質ドパミン神経細胞体でのドパミン動態はドパミン神経変性と密接に関係していることが考えられます。すなわち、細胞質ドパミンは自動酸化を受けやすく容易に活性酸素を産生するため、黒質ドパミン神経は酸化的ストレスの危険に曝されることになります。

ポイント パーキンソン病の発症には黒質ドパミン神経細胞内でのドパミンの自動酸化が関与する