18. パーキンソン病は亜鉛毒性と関係する!

パーキンソン病モデル動物作製には、合成麻薬の副産物1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine(MPTP)、ドパミン代謝物6-hydroxydopamine(6-OHDA)、除草剤paraquat(PQ)などのドパミン神経毒が用いられます。MPTPはモノアミン酸化酵素により活性代謝物である1-methyl-4-phenylpyridinium(MPP+)となり、6-OHDAやPQとともにドパミントランスポーターにより選択的にドパミン神経細胞に取り込まれ、神経を変性させます。

私たちは6-OHDAやPQによるラットパーキンソン病モデルで黒質ドパミン神経細胞死のメカニズムを解析しました。ドパミントランスポーターにより取り込まれた6-OHDAやPQは黒質ドパミン神経細胞内で活性酸素を産生します。活性酸素のなかで、過酸化水素は細胞膜を容易に通過することがでいます。産生された過酸化水素は逆行性に輸送され、プレ側のグルタミン酸神経終末に発現する過酸化水素感受性のtransient receptor potential melastatin 2(TRPM2)チャネルを活性化させ、グルタミン酸開口放出を促進します。その結果、細胞外グルタミン酸シグナルによりZn2+透過型 GluR2欠損AMPA受容体を介して細胞外Zn2+が黒質ドパミン神経細胞内に流入し、細胞内(細胞質)Zn2+恒常性が破綻し、黒質ドパミン神経細胞死が惹起され、運動障害が惹起されることを明らかにしました。この細胞死は細胞外Zn2+キレーターであるCaEDTAで細胞外Zn2+流入をブロックすることにより、あるいは、細胞内Zn2+キレーターであるZnAF-2DAで過剰な細胞内Zn2+を捕捉することにより完全に阻止することができます。つまり、運動障害が現れる前の黒質ドパミン神経細胞死の要因がZn2+であることを突き止めました。

ポイント パーキンソン病は過酸化水素を介したZn2+毒性に起因する